当研究室は、水災害に関わる自然・社会の現象解明と、新たな技術・政策の提言を通じたリスク軽減を目的とし、以下の3つのアプローチで研究・教育を進めています。
研究のアプローチ①:
水災害に関わる多様な現象を科学的に捉える
当研究室の研究は、水文学的現象の観察と理解を基盤としています。特に、降雨から流出、氾濫に至るまでの物理的なメカニズムを明らかにすることを重視し、降雨流出過程の理解とモデル化を研究の基盤としています。自然現象だけでなく、社会の側面も水災害のリスク形成に深く関わっているため、社会的要因の観察と理解にも力を入れています。現地でのヒアリングやアンケート調査など、量的・質的研究を組み合わせたアプローチも取り入れています。水害発生後の現地調査も重要なアプローチの一つです。被害の実態とその原因を多角的に把握することを通じて、リスク形成過程の理解を深めています。
研究のアプローチ②:
水災害リスク軽減に資する新たな技術・政策を提案する
当研究室では、水災害リスクの軽減に向けて、従来の延長にはない新たな技術や政策の方向性を構想・提案することを重視しています。具体的には、降雨流出と洪水氾濫を一体的に予測する技術の開発、リアルタイム洪水予測、気候変動の影響評価、極端事象の統計解析、複合災害のモデリング、そして極値統計解析の手法開発など、新たな技術の開発と提案を行っています。ハザードだけでなく、水災害に影響する社会の曝露(資産形成や人口動態等)や災害に対する脆弱性を含めた被害発生メカニズムの分析と動学的モデリングにも取り組んでいます。被害の構造的要因を明らかにすることで、土地利用の在り方や災害復興の進め方など、制度や政策のあり方に関する提案も行います。このように、技術と政策の両面から課題をとらえ直し、新しい仕組みとして社会に提案していくことが、私たちの研究アプローチの核の一つです。
研究のアプローチ③:
創出した知を実践につなげる
当研究室では、開発した技術や知見を実社会で活用し、現実の課題解決に貢献する「実践」を重視します。たとえば、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)などの社会実装型のプロジェクトでは、政府・自治体と協働しながら、開発した技術を実際の防災・減災の現場で適用しています。こうした取り組みは、単に技術を届けるだけでなく、現場の声を通じて新たな研究課題を発見する「フィードバックの場」としても機能しています。国や自治体の委員会等に教員が積極的に参画し、科学的知見に基づいた政策形成の支援にも取り組んでいます。さらに、建設会社・建設コンサルタント・気象情報会社・保険・リスクコンサルタントなど多数の民間企業との共同研究を通して、最新技術の段階的な社会実装を進めています。こうした実践を国内外に発信し、社会全体の変革へとつなげていくことも私たちの重要な使命です。