シンポジウム 『ダムのアセットマネジメントを考える』
日付:2007年4月25日
於 :京都大学百周年記念時計台記念館

冒頭挨拶

by 国土交通省河川局治水課長 関さん

3つのポイント:長寿命化・品質・危機管理 治水の経済評価(社会的+物理的)

既設ダム有効活用の課題と展望

by 中川博次先生

−ダム再開発の機能,構造上の課題と対策ー(ダム再開発検討研究会)

なぜ再開発が必要か?

 1. 既存ストックの有効活用  2. 長期寿命:必要に応じて機能を拡大していけば,資産価値が高まる  3. 超過洪水や異常渇水(危機)に対応する必要性  4. 社会的要請の変化:自然環境に配慮する必要。上下流の連続性を確保する  5. ダム堆砂の問題  6. ダムサイトの有効活用

機能の向上(容量の拡大・再配分)・長期化(とくに堆砂問題,耐久性の向上)・回復(排砂,自然環境)

単独ダムの貯水容量の有効活用:サーチャージ水位を越えて設計洪水位まで使うなど。

ダムの運用操作の合理化:事前放流(平成17年度の新規施策) (降雨予測ができないと難しい,利水の損害補填など)

洪水調節方式を変える。

ダムの弾力的運用:フラッシュ放流を組み合わせた土砂還元

ダム群の再編(利根川の事例),連携(鬼怒川の事例:五十里ダムと川治ダムとの水のやり取り)

堆砂問題:総貯水量/年間堆砂量 < 200 のダムでは緊急対策が必要

ダムの法定耐用年数は80年。構造物の耐用期間は100年。

ダムの嵩上げにあたり,合理的なダムの設計法(とくに新旧コンクリートの接合部の評価など),基礎地盤の支持力を入念に検討する必要がある。(萱瀬ダムの事例紹介)

公共施設におけるアセットマネジメントの動向

by 小林先生

「アセットマネジメントとは,限られた予算を社会資本に最適に配分することにより,今後新たに整備される社会資本を含め,各社会資本に求められている価値およびサービスレベルを維持,あるいは求められるアウトカムを達成すること。アセットマネジメントシステムとは,その目的を達成するための予算および資産価値の管理システムである。」

ダム施設の特徴:長期的視野,多大な不確実性と不可逆性,資産評価の困難性(堆砂の問題)

50年前にできた社会資本の資産価値は,例えば橋梁でも数万円になる。 ただし,補修のために投資をすると,資産価値が急増し,それに対する固定資産税がかかるようになる。

資産価値の定義(本来は非償却性資産であるべきとのこと)

  • 非償却性資産(持続的資産):半永久的に継続し,将来世代に資産として継承すべき資産。(原因者負担)
  • 償却性資産(戦略的資産):戦略的に投資の対象として捉えるべき資産。(受益者負担)

非償却性資産のLCC評価においては,割引率を考えると事後修繕の方が予防修繕より安くなることがある。ただし,施設全体で考えれば,そうはならない。つまり,施設単体で評価すること自体が間違っている。(平均評価法で評価する?)

非同期レジームの利点(管理は平準化して行うべき)

アセットマネジメントには'繰延維持補修会計'がよい。 (長期的なアセットマネジメントの計画が必要になる。)

従来のB/Cではなく,'リアルオプション'の考え方にたって評価する。 (不確実な将来に対して,現段階で将来のことをすべて決定してしまうと考えないマネジメント方法(かな?)。)

信頼,責任,知識共有化のマネジメント

近畿地方整備局におけるダム管理の課題

by 国交省近畿地整 井上さん

近畿直轄ダム:天ヶ瀬(71),猿谷(59),真名川(10),九頭竜川(32) の4基 (カッコ内はダムの堆砂率 %(有効堆砂容量に対する割りあいかな?))

真名川ダムではフラッシュ放流を試験的に開始。 淀川水系総合土砂管理検討会 ⇒ 天ヶ瀬ダムをモデルとして検討

関西電力管理のダムのアセットマネジメント −電力ダムの価値と維持管理の現状・課題−

by 関西電力 片岡さん

関電:総出力 3570万KWの うち 1/4 が若狭湾原発,半分が火力 水力発電所148施設,819万Kw(1897年の蹴上発電所が最も古い)

ダム式,ダム水路式,水路式,揚水式

関電直轄45ダムのうち貯水池は3ダム(木曽川,黒部がメイン)

黒部ダムの有効容量 :1億3,600万トン 出し平ダムの有効容量:1万2740トン

・堆砂対策事例と経済効果

出し平ダム:排砂ゲートからフラッシング

貯めた水は一度捨てて,自然の掃流力で流す。水が少ないときに土砂が流れる。 ⇒ 自然環境に大きなインパクトを与える。 ⇒ 小出水時に排砂をする。

旭ダム:熊野川水系の奥吉野発電所(揚水発電)

平成10年に2.3kmのバイパストンネルを建設。 旭ダムへの流入量が5トンを越えると,濁水をダムに入れない。

ダムのアセットマネジメントの今後に向けて

by 角先生

日本の総貯水容量230億トンのうち,全堆砂率は7.4%

RESCONモデル:世界銀行が中心となって開発した,ダム土砂管理における追加投資の効果を評価するモデル。

布引五本松ダムの事例:土砂バイパスを建設(1908年)し長寿命化に成功した事例。

土砂量が多い流域においては,集中型の多目的ダムから,分離型ダムにかえるという方法もある。

治水専用ダムと穴あきダムの違い

多目的ダム:ゲートあり ゲートレスダム:洪水が来たときには自然放流する(これを穴あきダムと呼ぶことがある) 治水専用ダム ⇒ 常時貯留をせず,ダムのゲートは下につける。