Activity

1st International Conference of Hydropedology
日付:2008年7月28日〜31日
場所:ペンステート大学(ペンシルバニア州,state college)
OSUからの参加者:Jeff, Luisa, Chris, Taka
参加人数:142人
発表:ポスター(28日,29日)

1日目午前

  • Bill Dietrich (UC Berkley, Geomorphology)

Flow in near flactured bedrock の話題 アメリカ西海岸の3つの森林流域を対象にした観測研究。 (Coose Bay: オレゴン海岸に位置して砂質土の流域,カリフォルニアにも新サイト) 土壌と岩盤との間の weathered bedrock (侵食岩)における流出 土壌内では鉛直浸透(砂質土なので浸透が早い)して,岩盤との境界から側方流出する。 岩盤に入った水がどこで再び流出するかを予測できるか尋ねたが,必ずしも明確な答えは得られなかった。 まず最上流のストリームの場所が第一ゲスのようだが,その下流で湧水を見つけて,やっと水バランスが取れたようなことも言っていた。また,土壌侵食量を流域比較の指標にしていたのが興味深い。土層厚を決めるパラメタとなるからだと思う。今後は植物の根が吸水するプロセスにも着目。その仮説は,乾燥しているときに岩盤から水を吸って,雨が降ったら薄い土壌の層に水を返すということらしい。

  • Jeff McDonnell? (OSU)

Fill & Spillのアニメーション → 斜面スケールのVirtual Experiment -> 流域スケールT-SAS Hewlett & Hibbert (1965) Factors affecting ペーパを再度確認する方がよさそう。 Panoraの人工降雨試験も10%程度の流出率で残りは岩盤へ浸透している。

  • Alex McBratney? (University of Sydney, Soil)

Digital Soil Mappingの話題。McBratney?(2003)のSCORPANには,流出(H)と降水(R)のタームが独立変数として入っていないので,それを入れるとどうなるか,ということだと思う。流出タームは,Wetness Index ならぬ Dryness Index を使うことを提案。いずれにしても,地形から得られる指標を用いるのがポイントのよう。 Mountain water... Catena 2008, 72, 395 - 404 は Stream Order と Soil Distribution との関係を説明した論文。

DSMによってClay, Sand, Gravelの構成比を得て,それをニューラルネットワークの変数とし,水文パラメタ(透水係数など)を得るアプローチも提唱していた。

  • Jeff, Dietrich, Rosemarryと昼食

JeffとDietrichとのやりとりを聞いてると,さすが大物通しと関心してしまう。とくに自分が過去にやった研究に関連する話題が出てきたときに,その研究の内容をひけらかすわけでもなく,スッと説明して,相手に興味を持たせる議論の進め方は見習うべきところが多い。土壌厚が7mに達するなんてあり得るのか,土壌の定義が何かといった議論が展開された。HJAの7mにはweathered rockも含まれていると自分は思っているのだが,どうやらJeffは違う考えをもっているようだった。 山腹斜面で深い井戸を掘るときの苦労話も聞けた。 土層が7mの深さまで広がっているのは,地下水の最低レベルが7mの深さまで及ぶから,という仮説はとても興味深い。Jeffが河道の勾配と岩盤の勾配とが一致するかを聞いていたが,必ずしもそうでもないという返答。

1日目午後

  • Timothy Allen

独特ななまりの英語で会場を笑いの渦に巻き込。 生態に関する Complex と Complicated の違いなど抽象的な話題で内容はよく分からず。

  • Luisa

Hydrus2d, 3dを使った斜面スケールのバーチャル試験の結果。 降雨を与え続けて定常状態に達したら,saturatedになるかというBillの質問。

  • それは条件によると思う。必ずしも飽和しない。 Sidle先生から,土地利用・植生の影響についての質問。 (Comet Program という斜面のアニメが魅力的。)
  • ポスター発表

JeffがChristian Stamm (Swiss Federal Institute of Aquatic Science)を紹介してくれた。 スイスの農地流域を対象とした観測研究をしていて,pestisideのデータが豊富にあるとのこと。 T-SASにも興味を持ってくれて,共同研究の可能性などを議論。 どこから水がくるか,といった予測結果も重要。

Maimaiの現地試験とそのモデリングに関する研究成果。

Banquetの後にRick Hooper (CUAHSI)のプレゼン。 Hydropedologyが対象とするスケールを,3つのスケールに分けて説明していた。 鉛直方向の水・物質移動を考える小スケール,横方向の移動を考える流域スケール?, 海岸までの全体を考えるValleyスケール (だったと思う)。

2日目午前

  • van Genuchten

保水量曲線で有名なvan Genuchtenによる発表。Unsaturated Soil Hydraulic Propertiesについて。 Preferential Flow の効果をリチャーズ式でいかに表現するかという内容。 派手な写真などを使わず,式の多い内容だが,発表の方法がうまいのか,ひきつけられた。 これまで良く知らなかったが,Multi-Porosity Hydraulic Model など保水量曲線と透水係数曲線とを変えることによって,様々なPreferential Flowの効果が出せるという内容。 同じような方法を流域スケールにスケールアップできないかと思う。 Preferencial Flowを考慮しつつ物質流出を計算するためには,Mobile Inmobileの式が必要になる。要チェック:Altwan et al.?

  • Hans-Joerg Vogel (ドイツから,2012 Hydropedologyのチェア)

リチャーズ式のアップスケールの方法に関する興味深い内容。 細かい内容はよく理解できなかった。vogel & lpisch, VZJ2008は要確認。

  • Allan Lilly

イギリスのHOSTモデルに関する発表。流域をプロセスの異なるクラスに分割し,そのHOSTクラスごとに異なる構造の流出モデルを適用する。パラメタも各クラス毎にあらかじめ範囲を決めておく。日本でもこうした標準的なモデリングをしてもよいのではないかと思う。発表の内容は,土壌マップからHOST CLASSをいかに得るかという内容。 質疑応答で,Phillip Owens (Perdue)がコメント。インディアナ州にHOST modelを 適用して,水流出だけでなくて物質流出もうまく再現できたとのコメント。 帰ったらコンタクトをとって,文献を送ってもらうように約束。

  • Alvin Smucker (Michigan State University)

Soil Physicsの発表。マイクロトモグラフィによる土壌カラムの視覚化や, Smoothed Particle Hydrodynamicsと呼ばれる粒子法による土壌内の流れのシミュレーションなどの紹介。 アニメーションの綺麗さは圧巻。古い水ならぬ,古い空気のシミュレーションには驚いた。

2日目の午前中後半はAlvinの発表に類したものが多かった。 Hydropedologic function とは,土質の様々なパラメタを独立変数として,透水係数を予測する回帰関数 であることを知る。マクロトモグラフィで得られる変数を独立変数とした研究もあったけど,それって, その関数のパラメタを知るためには,スキャンしないとだめってことと疑問を持った(透水試験の方が早い..)

2日目午後

  • Christopher Duffy (Penn State Univ)

Critical Zone Observatoryにおける流域観測の内容とPIHM(Penn State Integrated Hydrologic Model) の紹介。2001 JoHに滞留時間のモデリングの報告があるとのことなので,これは要チェック。

  • James Lynch

1960年代に実施された小流域スケールの人工降雨試験の紹介。 1965年のプロシーディングスの内容がBenchmark Paperに選ばれてるとは知らなかった。 50mまで掘った井戸もあるとのこと。

後は観測ネットワークの紹介などの内容がつづいたので,ポスターを見に行った。

夕食後は Peter Black による環境保全問題に関する講演会。。。 Reading Listは面白そうな本がいくつか載っていた。ホームページを要チェック。 授業や講演会でいつも思うけど,アメリカ人の聴衆ってほんとに寝ない。 眠たそうな人もあまり見かけない。朝の8時から夜の10時半までみっちり学会で疲れた。

3日目午前

  • Siva

Structureをcharacterizeするだけでなく,なぜStructureができているかを考えて,それを予測しなさい,というストーリ。これまでに何度か聞いた話だが,新しいPhDの学生の結果が含まれていた。植物がNet Carbonの生産を最適化することによって,蒸発散量を予測できるというモデル。オーストラリアだけでなくて,中国のサイトにも適用してその効果を確かめていた。Evolutionary Perspectiveがキーワード。

  • Phillip Owens

SSURGO,SCORPAN,DHSVM,Wetness Index などの土壌や水文空間情報をもとにデータマイニングする話題。 いろいろな話が錯綜して,途中から発表の方向性が分からなくなった。 土壌や地質データをいかに流出モデリングに用いるか,というのはいつも直面している問題なので,大事な内容だと思うが。

  • Michael Young

土壌の年代によって,根の深さが違うという興味深い仮説。乾燥地帯の土壌を対象とした研究。年月が経過するにつれて,砂がシルトに変化し,透水係数もそれにあわせて変わっていくらしい。土壌の構造と透水係数との関連を調べた内容についても紹介があった。

  • Kyungsoo Yoo (Univ. Delaware)

Chemical Weatheringのモデル化の話題。最初に自分のJournalリストを見せびらかして,この内容を発表しますというのはどうかとも思ったが,外国人がアメリカでやっていくにはそれぐらいのアピールが大事なんだろう。数学中心の発表だったが流れはとても分かりやすかった。要は風化を予測する式に化学物質の変化式を組み込み,風化の速度(土層厚)を予測するということなんだと思う。細かいことは分からないが,斜面スケールの土壌厚の変化まで予測できるとのこと。斜面のEvolutionとそれに伴う流出プロセスの変化といった研究課題に取り組むには,こういう専門家とタックルする必要があると思う。

昼食は,Siva,Chris,Luisaと一緒にインディアンレストランでBiosphare2のミーティング(を傍聴)。

B2ミーティングはいろいろとためになった。Sivaと研究のことでミーティングをするのも始めてだったし,どんな風にアイデアを提案するかにも興味があった。ミーティングの内容は,B2のペーパをどうまとめていくかということで,モデル比較だけでペーパとして十分か,ということが出発点。で,いろいろとアイデアも出て,結局は,1)hillslopeのデザインに重点を置く,つまりとくに新しいことはせず,シミュレーションに留める,2)hillslopeのEvolutionに重点を置く,つまり,土質構造の変化を何らかの方法で予測して,将来,hydrologic responseがどのように変化していくかを予測する。3)hillslopeのFunctionに重点を置く,具体的な例として,Budikyoカーブにhillslopeの反応が従うと仮定した場合に,Hydrusのパラメタ(土壌)がどのようになるかを逆に推定する。という3つのアイデアが出た。どれもSivaがよく言ってる内容であり,またLuisaやChrisのアイデアがあってのこととはいえ,1時間ほどのミーティングでここまではっきりと方向性を引き出せるのはさすが。OHDISモデルをHillslopeに適用してみて,パラメタがどれくらい異なるのかを確かめるのも面白いと思う。

さすがに3日目午後にもなると発表を聞くのにも疲れてきて,キャンパス内の本屋などを散策した後,やりかけのプログラムに取り込む。各ディスカッショングループからの報告は次のようなもの(とくに際立つものは無かったと思う。)

  • Discussion

1: Emerging Theory

What Heterogeneity mean for hydrologic processes and functions? Trying to understand or capturing the internal processes for predictive models How soil and hydrology impact each other? "Geophysical methods" for up-scaling (Ground penetrating radar) Intermediate scale between soil scale and catchment scale may bridge the gap.

2: Multi-scale models of models

3: Advanced monitoring, sensing, mapping, visualization of subsurface

CT scan for soil structureField scale quantification EMI, GPR: still challenging deep drainagae to groundwater が観測できない expensive measurement の情報をどうスケールアップするか

4: Integrated study of the Critical Zone

5: Cutting-Edge Applications and Innovative Education

international policy efforts on sustainable development for the soil protection realistic providing boundary conditions for hydrology and soil science

Concluding Remarksのところで,ベストポスターの表彰があって,どういうわけだか自分のが選ばれる。あまり多くの人と話す時間も無かったし,専門外の人も多かったので,びっくり。とても気分よく3日間の会議を終えることができた。その日の夜は,OSUの友達とメキシカンで夕食。宿舎に帰ってロビーでパソコンを叩いてたら,バッファローからきた KyonghoさんがモデルやT-SASについていろいろ質問を受けて,さらに話はモデル全般におよび,夜中の1時半頃まで寝られなかった。

4日目:フィールドトリップ

長い1日だった。全部で4箇所を巡った。ひとたびバスを降りたら100人近くのGeo-,Hydro-,Pedolo-Scientists が思い思いに散らばり出し,まぁ収集がつくわけもない。午前中は,Kepler FarmとShale Hills Critical Zone Observatory,午後はLiving FilterとI-99 pryite remediation siteを訪問した。

Kepler FarmではEMI(?)レーダのデモ。1mぐらいの深さまでの土壌水分量が測れるという。もちろん,土壌水分量を直接測ってるわけではないので,結果の解釈やキャリブレーションが大事なのだけど。

Shale Hills Critical Zone Observatoryは,James Lynchの発表でもあった歴史のある観測サイト。HJAに比べると勾配がゆるく,道路からのアクセスもよい。気象,土壌水分,Isotopeなど,思いつく観測はかなりの密度でやっているよう。Bedrockまで掘り込んだ井戸もあって,あとで聞いた話では,地下水レベルが乾季には随分下にあって安定しているが,雨季になると地下水レベルが上がって(どこまで上がるかという大事なところはいまいち聞き出せなかったが...),降雨に対して敏感に反応を示すとのこと。やはりDeep Ground Waterの観測は大事だと思う。Weathered Bedrockへの浸透なども研究の対象。これほど大きな規模であらたに観測サイトを立ち上げる例は珍しいみたいだけど,新しいGeophysicsの機器を持ち込んで観測している以外には,これまでに他の地点でやられたことをリピートしているような気がしないでもない。もちろんリピートしながら,サイト間の比較をすることも大切なことだと思うけど。