期間:2009年1月19日から21日

場所:オーストリア,ウィーン,Vienna International Center, IAEA

ワークショップ:State of the art of catchment-scale residence time: conceptualization, modeling and analysis コンビナー:Jeff McDonnell?(Oregon State University), Pradeep Aggarwal (IAEA)

参加人数:約30名

主な参加者:Keith Beven, Sarah Dunn, April James, Jim Kirchner, Kevin McGuire?, Piotr Maloszewski, Allen Rodhe, Andrea Rinaldo, Mike Stewart, Chris Soulsby, Doerthe Tetzlaff, Peter Toroch, Markus Weiller, etc.

全体の流れ:初日と二日目の午前中は研究発表。二日目午後は4グループに分かれてディスカッションを行った。三日目はMRTの問題点をまとめた論文の執筆。

自分の発表:二日目午前中に,RTモデリングのセッションの中で発表した。発表内容は,T−SASのマイマイ・HJAアプリケーションについて。これまで行った発表よりも,RTをモデルで再現することの意義とモデル構造の詳細な説明を行った。

発表に対する質問:Jim Kirchnerがまず高い評価をしてくれたよう。観測で求められたMRTとモデルで計算されたMRTの値が若干違うことを指摘された。それに対して,この違いを求めることが出発点であり,モデルの構造を変更することで,観測結果に近づけていけばよいと答えると,納得してくれた様子。

Bevenからは,この手法の本質はハイドログラフの分離を行っているものであり,ill posed problemであるとの指摘。計算には"uncertainty"が大きいと言われた。Jeffが間に入って回答してくれたのでとりあえず回答は避けた。休憩時間に質問の意義をもう一度正したところ,次のような2点が問題であると指摘をもらった。

一点目は,ill posedについてであった。それはハイドログラフ分離一般に関することであって,この手法そのものは逆解析をしているわけではないので,ill posedでは無いことを説明した。まぁあんまり納得してなさそうだったけど...

二点目は,pressure celerity / water velocity,mobile / immobile についてであった。これは前からBevenがよく言ってるこであり,だいたい分かっているつもりではあるが,その解決法についてはどうもいまいち理解できなかった。Bevenも共著者となっている,Page et al. HP2007 と Iogrescu et al. WRR2007を読み直す必要がある。pressure celerityの問題は,kinematic waveで解いている限りは,問題ないと思うんだけど。ただし,不飽和のpressure waveは今使っているq-h関係ではうまく表現できていないのかも知れない。フルリチャーズ式で解けば大丈夫なはず。immobileやコンプリートミキシングの問題はトレーサ追跡のためのパラメタを増やせば確かに表現できるようになると思う。が,本来は流出モデルそのものの構造を変えて,preferencial flowやdeep ground waterを再現することが本質ではないかと思う。

後でJimからdispersionの誤差に関する指摘もあった。この3点を明確にすることが大事だといえる。

共同執筆について:二日目は4グループ(それぞれ6人程度)に別れ,原稿の無いように関してディスカッションを行った。4グループは,それぞれ,RTの定義,RTの求め方,RTの地形・環境コントロール,RTのモデリングである。自分はRTのモデリングに割り当てられた。グループには,Keith, James, Brent, Chris, Worman, Philipがいた。ディスカッションは,データの必要性や,周波数解析など,必ずしもモデリングには直接関係しないと思うところまで議論が及んだが,上の3点が大切であることを一応述べたつもり。分担執筆は,二人ぐらいのグループにまた分かれて,担当箇所を書き出すというもので,その後,書いた内容を読み上げるなど,なかなかハードなものだった。いろんな意見が出て,とくにRTの定義については議論が煮詰まったが,これまでのレビューを超えるような新しいアイデアがどれくらい出せているかは,集約した原稿を見てみないと分からない。

学会中にコメンタリーペーパを書いてしまうという試みは,自分にとっては始めてのことで,いろいろとよい経験になった。きっちりとした成果が出せて,議論をなんとか集約させていけるというメリットがある一方で,そのことを優先させるがために,深い議論,新しいアイデアが出にくいというデメリットもあるような気がした。最終の原稿が楽しみである。